2013年07月15日

夏休みの読書に

 日本では、毎日200冊の新刊本が出ているといわれます。その分、姿を消してゆく本も多いわけですが、今回は、時の洗礼を受けても色褪せていない二冊をご紹介します。科学者も人間であり、科学魂や科学的観察眼のベースになった自然体験や人間性が欠かせません。そんなことに思いをめぐらせながら、味わっていただけたらと思います。

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『働かないアリに意義がある』(長谷川英祐著/メディアファクトリー新書)
「働きアリのうち7割は働いていない」とご存知でしょうか?
 ではなんのために生きている? 今の進化論で説明できるの? 社会性昆虫の研究成果を人間社会にたとえながら、わかりやすく話を進めています。研究の裏話もおもしろく紹介されていますし、働いているアリの3割がいなくなったらどうなるか、といったユニークな疑問にも答えられています。
 生きものに関心を寄せる方全般、「働きアリのうち7割は働いていない」を理由に仕事をサボる方(?)にお勧めしたい一冊です。
<樋口 洋>

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『少年動物誌』(河合雅雄著/福音館文庫)
 昭和初期の丹波篠山で、弟と川で魚をつかみ捕った夏の日々。魚を入れるびくを忘れ、ムギツクという小魚を無理やり口に押し込む。ところが、つめ込みすぎてのどの奥にまで達し、最後には白目をむいて全部吐き出してしまう、ハチャメチャで野放図な姿。
 カメムシ、ミイデラゴミムシ(屁っぴり虫)、アゲハ幼虫など、あえて臭いものを飼育する。それは、敵とみなす隣集落のガキ軍団に、いつか一泡吹かせようと企んでいるからだ。その「毒ガス部隊」による「臭気の刑」の演習として、糞をまきちらして暴れ回るゴイサギ幼鳥(これも飼育中)へのおしおきを実践。戦い終えて負傷した「兵たち」を「よく頑張り抜いた」と拾い集めるが、その後には、経験したことのない虚しさも待っている。
 自然保護などという言葉がまったく必要でなかった幸せな時代。そこには遊びの創作という自由があり、遊ぶ友だちが無限にいた。その贅沢さには、読者も満腹になるほどだ。
 病弱で学校を休みがちだった少年期の著者が、こうした体験を経て、のちにどうなったか。それをまったく知らずに、わくわくしながら夢中でページをめくり続けた少年期の私も幸せであった。感受性豊かな子どもたちに読ませたく、今なお文庫として版を重ねられていることは嬉しい限り。
<石塚 徹>


posted by あーすわーむ事務局 at 13:29| Comment(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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