(池田雅子 著/百年書房 すーべにあ文庫 ¥500+税)
同じ分野の研究や保全の世界でも、多くの情報がニッチを奪い合い、メッセージ合戦になりがちな昨今。本書は、力づくではなく、自然にブナの森へいざなう詩的な語りかけで始め、きわめてシンプルにメッセージを伝えています。
あーすわーむメンバーで、森林セラピストでもある著者の言葉には、あくまでも科学的な観察眼で一つの森を見続けてきた裏づけがあり、森の癒し効果は「あとがき」に説得力があります。扉にある「森では、森の時間が流れる」という一文さえ、「あ、たしかに……」と、誰も反論できません。
著者自身の挿絵に導かれ、ブナの気持ちにもなれるし、戦争を省みる気持ちにもなり、気がつくと、もう本の半ばすぎ。。
科学と感性を両立させた本書は、机に向かって読むのはもったいなく、旅のお伴にされるのをおすすめします。東京駅で発車前に鞄のポケットから取り出せば、小田原か静岡あたりまで、沿線の景色の記憶はなくなるでしょう(たとえば、です)。
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